パンドラメガネ

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「違う!もう、こんなくだらない虐めはやめろ!という事だ!!」  店長の怒号が店内に響く。 「あぁ、くだらない。人をそうやって虐めて何が楽しい?えぇ!何が楽しいんだ!何にも楽しくない!ただそれは、自己満足による優越感を味わいたいだけだ。何も出来ない、ただ人よりも自慢したい、自己満足したいという欲求だけの塊だ!そんなのは人の心を傷つけずにやれ!人を傷つけることは最低な事だ!それは、体の傷だけじゃない。心の傷もだ。人が人にやってはいけないこと。それは傷つけることだ。傷ついた人間はどんな気持ちになる。今、君は俺に叩かれた。人前で叩かれてどんな気分だ。最高か?気分いいか?気分良い訳無いよな・・・。なら、普段から君達に虐められている彼女の気持ちはどうなんだ?わかるか?いや・・・、今までわからなかったろ!今、人前で叩かれて、恥をかかされた君の気持ちと同じだ!彼女は普段から君達にそうやって傷つけられてきたんだ!少しは分かれ!!」  店長の説教が彼女達に効いたのか・・・。彼女達は三人で「どうすればいい・・・?」と口火を切ってから少しの時間、話し合ってから神妙な面持ちで、三人は沙希に謝った。  それから、三人が沙希と一緒に帰ったあと、一人ぼっちとなった店で店長は長ベンチに横になり、店の天井を眺めていた。  すると、店の扉が開いて沙希が店に入ってきた。 「あの・・・。ありがとうございました」と沙希は深々と頭を下げてお礼を言った。  店長は体を起こすと、沙希に向かって「疲れたよ・・・、もうヤダよ。こんな疲れることは」とテーブルに置かれたままのパンドラメガネに向かって愚痴を言った。 「あぁ・・・。これが大人への一歩なのか・・・」と横になりながら呟いた。 「あの・・・、店長。わたし、ここでバイトしても良いですか?」と沙希が聞いてきた。 「バイト?いや、そんな事は考えていなかったけど・・・」と渋った表情で答えた。 「何だか・・・、このお店に恩返しをしたくて・・・」と沙希が店内を見回しながら言う。 「そっか・・・。わかった、いいよ」と店長は体を起こしながら言うと、両腕を開いて叫ぶように「ようこそ、空想屋にいらっしゃい!」と大声で言い放った。
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