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いつもの帰り道じゃなかった。
いつもの帰り道を通ると、いつもの人達に会ってしまうからだ。
そのいつもの人達は決して、良い人達では無い。いつも、自分を虐めてくる人達だ。
そのいつも自分を虐めてくる人達は、この帰り道でずっと見張っている訳では無い。訳では無いが、見かけると人のお金で何でも買わせようとする。お金が無いと拒むと、翌日、罰金と称して多額のお金を請求される。そして、学校内では徹底した無視。
それまで遊び友達だった数人の友人達は、関わりを恐れて自分から離れていった。
今では、学校内でも自分は一人ぼっちだった。
この状況をどうすれば良いのか・・・。
担任の先生に話せば無事に解決するという訳でも無かった。それは、脅されているからで、担任に話せば、影で暴力を振るわれる。
それを恐れて何も言えない・・・。
松岡沙希は、帰り道での待ち伏せを恐れて、いつもとは遠回りの道を歩き始めた。
いつものバス通りを歩いて駅まで行っていたが、今日はその手前で曲がった。それは、何気ない思い付きでの事だ。
バス通りから一本入った脇道は、住宅街となっているのか、同じ学校の生徒たちすら見掛けない。
通りの広さは車が一台余裕で通れる程度の広さで、2台のすれ違いは無理そうだ。
その狭い通りを初めて歩いてみた。初めてへの恐怖感と、いつもの虐めっ子達が現れないかとの恐怖から、景色を優雅に楽しむという雰囲気にはなれなかった。
ふと、バス通りからかなり入った所に、見慣れないお店を見つけた。
そのお店は概観は古めかしい木造の建物で、店の前には張りぼてのペンギンの置物や、汚れた犬の置物が置かれている。
沙希はふと、なぜか店先で足を止めた。そして、そこに惹かれたのは店先の棚に置かれている、黒と金色で装飾された、所々金色が剥げている置時計だった。
その置時計はゆっくりと時間を刻んでいる。そして、時計板の周りに装飾された金箔だろうか?金メッキなのか?とにかく、その金色が所々剥げているのが歴史を感じさせる。
沙希は1秒1秒、ゆっくりゆっくりと時間を刻む秒針に見とれた。その理由は自分でもわからない。
ただ、ゆっくりと時間を刻む秒針に惹かれ始めていた。
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