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沙希は店内に飾られている物を見て、初めて興奮を感じた。そこにある物は全て、自分が生きてきた16年という生涯の中で見た物は無く、全てが初めて見る物ばかりだった。それも、全てが気になる物ばかりだ。
中でも、一際目を引いたのは、幾つか飾られている中にある物で、それだけは非売品を書かれていた。
「あれって・・・、普通のメガネですよね?」と沙希が一番奥に飾られているメガネを指を指して店長に聞いた。
「あっ!あれね。うん、普通のメガネだけど・・・、ちょっとだけ普通じゃないかな・・・」と店長が少しあわてた様子を見せる。
「他にも興味を引く物があるでしょう?あっ!そうだ。ほら、人生時計、人生時計を見てごらんよ」と店長は沙希を丸テーブルに誘い、座らせると店先の飾り棚から置時計を持って来た。
「ほら・・・、この置時計を眺めていてごらん。気分が落ち着くし、幸せを感じられるよ。あっ、そうだ。何か飲み物を持って来るよ・・・」
店長は振り返って店の奥に入って行った。
沙希はテーブルに両肘を置き、手を組んでずっと置時計を眺めていた。
店長は奥の冷蔵庫から麦茶を準備して、グラスに注ぎ、一つは沙希に、もう一つは自分にと準備をして戻ってきた。
「お待たせ」
店長は沙希が置時計を眺めて幸せを感じているだろうと思い込み、静かに沙希の邪魔をしないようにテーブルに麦茶の入ったグラスを置きながら、沙希の顔に視線を送った。
次の瞬間、手にしていたグラスを床に落とした。
「どうして・・・」
店長の目に飛び込んで来たのは、非売品で取り出すことの出来ない筈のメガネを掛けている沙希の姿だった。
「どうして・・・」
店長はすぐに沙希の体からそのメガネを外した。外すとすぐにショーケースの方に視線を向ける。しかし、ショーケースは割られた様子も無い。常に鍵が掛かっている筈のショーケースだからと、店長は自分のポケットに入っているケースの鍵を確かめた。その鍵は間違いなく、店長のポケットに入っている。
『なら・・・?』店長の脳裏に疑問が沸く。と突然、沙希が悲鳴を挙げる。その様子は予想していた事であって、対処は出来るがそれ以降の事をどうすれば良いのか。
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