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「何してんだよ!そんな壊れかけの時計なんか見てさ」と茶髪に厚化粧した女の子が言う。
「早く行くよ!迎えに来てやったんだからさ」とその右隣の女の子が続ける。
沙希は何も言わず、自分のカバンを持って立ち上がろうと腰を浮かせた。
「待って!!」と店長が声を挙げる。
「何だよ、おっさん!学校に遅れるだろうが」と真ん中の女の子が体の向きを変えながら店長に向かって言葉を返した。
「まぁまぁ・・・。そうだ。みんな、ちょっと面白いメガネを掛けてみないか?このメガネ、これからの未来を見せてくれる不思議なメガネなんだよ」と言って、店長は三人にメガネを差し出した。
「えっ・・・」
沙希はそのメガネが何か知っていた。だから、驚きの声を挙げた。
しかし、その沙希の反応が返ってよかったのか、三人は『良い物』だと勘違いをして、我先にメガネを掛けようと取り合いを始めた。
「ちょっと、面白そう。私が先!」
「ダメ!先に私が見る!」
三人の取り合いの末、真ん中にいた女の子が先にメガネを掛ける事に決まったらしい。決めた方法は、単なる我侭から生まれた三人の中での威厳、権力だ。
真ん中の女の子が笑顔でメガネを掛ける。と、しばらくの間黙っていた。
と、次の瞬間、恐怖に怯えた叫びを挙げて、メガネを取るとそのまま思い切り店長に向かって投げつけた。
「なっ・・・!何よ、このメガネ」と彼女は怯えた声で店長に向かって言い放つ。
店長はゆっくりと床に落ちたパンドラメガネを取ると、「君の近い未来が見えただろう」と少し冷たく微笑みながら言う。
「馬鹿な・・・。何で・・・、何で私があんな目に会わないといけないのよ!!」と叫ぶ。
周りの女子高生はその会話に興味を持ち、「次は私・・・」と言って店長の手からパンドラメガネを奪うと、直ぐに自分の顔に掛けた。
「やめなよ!」と最初に掛けた彼女が叫びつつメガネを取ろうとするが、まだ掛けていない女の子がその手を掴んで、奪われるのを阻止した。
「自分だけズルいよ!!あたしだって見たいんだから」と言う。
「馬鹿じゃないの!見ても最悪だよ!」と言った瞬間、二番目に掛けている女の子が悲鳴を挙げた。
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