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「あれ?」
帰宅後。晩ごはんを食べ終えて、勉強しようと自室で鞄を開けると気付く。
英語の教科書が無い。
明日小テストがあるのに。だから勉強しようと鞄を開けたのに。
幸いノートはあるけれど、苦手科目をこれだけで乗り切るには心細い。今日初めてここでの授業を受けたから一ページちょっとしか使ってないし、ほぼ未使用状態だ。完全に戦力外。学校に置いてきちゃったのかな?
帰り支度の詳細なんて覚えてない……。右も左も分からない上予想以上に沢山の人が見物に来たものだから、圧倒されたとしか今日の印象が無い。
……無論一番のインパクトは、一番だけに彼女だったが。確認しに行ってみる?
時刻は午後九時。ううむ。
もしこんな時間に出入りした所を見つかったら、先生に怒られる。転校初日から深夜の学校に侵入してお説教なんて受けたくないし、クラスでの僕のイメージも壊滅的な仕上がりとなってしまうだろう。初日という事もあって折角好感触だったのに、こんな理由で自爆なんかしたくない。
ちやほやはされても友達はまだ一人も出来てないし……。一番合戦さんも友人としてではなくあくまで案内役という立場だったから、仕事抜きの付き合いはまだしていないし。今日のお昼はクラスのみんなが一緒に食べようと言ってくれて、何とか一人にならずに済んだけど。授業中のグループワークもそんな感じで。
グループとか本当に勘弁して欲しい……。もたもたしていたらコミュニケーション能力が低い奴、ぽつんとしていたらそもそも友達がいないのを晒すようなものじゃないか。孤高を貫ける程強くもない。
こういう時、マイペースな人が本当に羨ましくなる。周りと違う事を苦に思っていない所か、そもそも周りが眼中に無いぐらいのあの自由度。友達がいないのを隠そうと虚勢を張っているのとは違う、単純に一人である事を全く気にしてないあの余裕。いいなあ。
新学期にしても新天地にしても、真の戦いとは二日目以降からだ。今度は僕から動かなければならない。
一〇月という中途半端な時期、既に派閥や力関係が出来上がっているコミュニティーの中へ、一人で斬り込んでいかなければならないのだ。その初陣である二日目を深夜に校内に侵入しお説教を受けたなんてニュースで飾れば、もうこのクラスでは友達が出来ないと思った方がいいだろう。
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