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 黒い穴の開いた死体(・・)。一つ二つと指で数えて、終えた少女は手を下ろす。  日本人離れした長身。細身だが適度に締まり、長い髪を二つのクリップで上下ツーブロックに分け、淑やかなフルアップに纏めている。  濃紺のブレザーに、ストライプが入ったグレーのスカート。通う高校の制服の下に穿いた赤いジャージが、体格と相俟って体育会系を思わせた。顔つきも凛としており、年齢より大人びて見せる。  年に一度は積もるもの。  足元のまだ汚れていない雪を、スニーカーでいじりながら嘆息した。白い息が闇の中、辺りを覆う竹林へ消えていく。  電柱よりも遥かに背の高い竹に囲まれて、何だか閉じ込められたような気分になった。それもあって鬱屈した気分を晴らそうと、早々に竹林を後にする。 「どう?」  ざくざく浅く積もった雪を踏み締めていると、遠くから声がして振り返った。  同じく辺りを探索していたクラスメートの少女が、肩まで伸ばした髪を揺らして駆けて来る。  穏やかそうな顔つきで、丸い眼鏡が優等生を思わせた。寒さで鼻が赤くなっている。  制服の上にマフラーと、降雪日にしては心許ない格好だが、ジャージを足しただけで防寒していない友と比べれば重厚だ。何せ彼女の七分に折った赤ジャージは、季節を問わない標準仕様。確かに女子同士、スカートがどれだけ心許ない服かは知っているが、夏まで脱がないのは女子同士でも理解し難い。 「……よくないな」 「あー……私もそんな感じかな」  沈痛な表情を浮かべる友を慰めるように、クラスメートも苦笑した。  深夜。中途半端に切り開かれた、山中の空き地。  彼女達の後ろには、先程まで友がいた竹林が広がり、野良と思われる猫の死骸が三匹横たわっている。腹にはそれぞれ黒い穴。大きさは掌で覆える程。残り三方には土を剥き出しにして、禿げ上がった山が並んでいた。  クラスメートは右腕の腕時計を見ると、あくまで明るく時刻を告げる。 「一一時四四分」 「縁起悪(えんぎわる)」  苦い顔で返す友。 「因みに見た瞬間は四四秒でした」 「いい、いい、いい。そういうの」 「あはは」  睨んだだけで同級生を泣かせた事もある、この近付く事さえ躊躇わせるような凛々しさと厳しさを放つ友人が、それだけで怖がるような仕草を見せるのがおかしくて笑ってしまった。  尤も一番傷付いたのは泣かされた同級生ではなく当人なのだが、それを知る者は少ない。
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