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「……笑うな」 「まあまあ」  むくれてはいても、矢張りその切れ長の目で睨まれると怖い。隠し事があろうと無かろうと。  クラスメートは右腕を下ろすと、真っ白に静まり返った辺りを見る。  月光を照らし返す雪がぼんやりと夜に浮く様は、美しいが死に装束のようだと思った。  私が死ぬのはいつだろう。  その死に様に、隣にいる彼女は居合わせるのだろうか。 「さてどうしてもんかね。足掛かりを見つけようにも、相手はいつでもどこでも好きな場所に現れては消えれるんだから、そもそも探すとか見つけるとかの問題じゃないし」  見渡しながら言ってみるも、酷く声が響くだけ。 「……人を探している訳でもないからな。仕方無いさ」  闇の中、地面を見ながら友は返した。  ぼそぼそとした口調の所為か、消えていく息が不愛想に見える。 「おや。弱気だね」  珍しい。そう付け足すクラスメートは空を仰ぐと、かつて覚えた言葉を唱えてみた。 「……『謂れを辿れ。さすればどこにいようとも追い詰められる』。だったっけ」  カチ、カチ、カチ。  静まり返った夜に、そんな乾いた音が響く。  音に伴い空き地の三方を囲んでいる山の一つ、丁度彼女らの正面にある山の頂に、人一人握り潰せそうな程巨大な白骨の手がにゅっとかかった。緩慢な動きと共にその身を成す骨を打ち鳴らし、山より大きな姿を現す。  息も凍る前に吹き飛ばす程荒れ出した風の中。その正体を見上げたクラスメートは、遊ばれる髪も払わず呟いた。 「――お出ましだ」  もう八ヶ月も前の事である。
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