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ユリ、いいか、よく聞け。
爺ちゃんな、もうそんなに長くねぇ。
おそらくこの何日かで死ぬ。
先月まではだいぶ遠くに見えていた光る道が、だいぶこっちまで伸びてきてる。
あの道が爺ちゃんの足元まで来たら……その時は逝かなくちゃならねぇ。
去年死んだ婆さんも光る道が……と言っていてな。
その時はなんの事だかわからなくって、病床のうわ言だと思っていた。
けど、今はわかる。
去年は見えなかった道がハッキリ見える。
そういう事だったのかって納得だ。
だから爺ちゃんは覚悟を決めた。
命の限りがわかるからそれなりに準備もできた。
死ぬことは恐くねぇ。
けどよ、爺ちゃんが死んだら、おまえは一人ぼっちになる。
おまえにとって2度目の一人ぼっちだ。
ああ、泣くなユリ。
大丈夫、お前はもう18歳。
今年で高校も卒業だし、そこらにいる甘ったれた18歳じゃねぇ。
苦労した分、誰よりも優しくて強い子だ。
爺ちゃんと婆さんの自慢の孫だ。
だから、しっかりと頑張ってこれからを生きていけ。
なあに、ユリにはこの先たくさんの楽しい事が待っている。
ユリには良い友達がいっぱいいるし、なんたって母親に似て美人で優しい子だから、そのうち恋人もできるだろうし結婚もするだろう。
だがな、その時は相手の男が本当にユリを大事に想ってくれるヤツなのか、働き者で正直なヤツなのか、よくよく見極めるんだぞ。
いいか、男は面じゃねぇ、心だ。
爺ちゃんくらいユリを愛している男を選べ。
そして誰よりも幸せになれ。
わかったな。
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