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高田公園の駐車場で、高柳さんの車を見つけるのは簡単だった。電話するまでもなく、白と黒に塗り分けられた車体は目立つ。
夜十時を過ぎているにもかかわらず、駐車場には幾台もの車があった。
ちょうど紅葉も見ごろの時期。高田城跡に作られたこの公園は、桜の名所として有名だが、紅葉狩りの絶景スポットとしても人気があった。
「素敵ナ方法デ、私ヲ、興奮ニ導イテクダサイ」
ブロンド女優は、どこへ連れて行ってくれるのか楽しみにしているようだ。
せっかく日本に来たのだから、赤く色づく木々に囲まれた三重櫓を見てもらうのも悪くない。高柳さんも、いいところを集合場所に選んでくれたものだ。
「日本の風情を感じられるところに連れてってやるよ」
翻訳アプリを通して話すと、なぜか彼女は大爆笑していた。ちゃんと訳してんのかな、こいつ。
オレたちは、トレーラを降りて極楽橋へ向かおうと歩き始めた。すると、高柳さんがパトカーから現れた。
今夜は制服姿じゃない。グレーのジャケットにトレンチコート。マル暴時代に戻ったような格好だ。
「おまえら、どこに行く気だ! 目的地は、まだ先だ」
高田公園は単なる一時的な集合場所にすぎなかったらしい。残念。
目もくらむようなブロンド美人と、仲良く紅葉狩りができると思ったのに。
オレたちは再びトレーラーに乗り込んで、パトカーに先導されるように高田公園を後にした。
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