第28話 爆音

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元男子更衣室で、いきなりトランプ大会が始まった。 種目はブラックジャック。折りたたみ椅子をテーブル代わりにして、ラテン系黒人がカードを配る。 ブロンド女優が「私にもシャッフルさせろ」と文句を言ったらしく、カードを奪ってデタラメに混ぜた。 再度、カードが配られ、三人がそっと手札を覗きこむ。 オレの角度からは、ブロンド女優の手の内が丸見えだった。配られたカードは、スペードのジャックとハートの四。 どう考えたって、勝てる手ではない。バスト覚悟でもう一枚引くのがセオリーだ。でも、ブロンド女優は「スタンド」とコールした。 これでガディンの外出はなくなった。あんなデカいのがついてこなくて、よかったよ。と、思った矢先、ブロンド女優が後ろ髪をかきあげた。そして手をカードに戻すと、いつの間にかダイヤのエースが手元にあった。 おいおい、こいつイカサマしてやがるぞ!  三人が手札を見せ合い、まんまとブロンド女優が勝利した。 イカサマをばらしてやろうと思ったが、くるりと振り向いたブロンド女優が、オレに向かってウインクした。 まあ、同行するなら、うるさいオッサンよりも、無口なジイさんよりもマシかな、なんて納得したりして。 「私たちは忙しいから、あんたたち二人で行ってきなさいよ」 葵さんは面倒くさそうに事務室に戻って行った。ええ? オレ、英語しゃべれないんですけど・・・。 すぐさま、アイフォンで音声翻訳アプリを検索する。
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