第34話 絶望

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目が覚めたのは、朝の七時半。 アイフォンの着信音が聞こえたような気がしたけど、面倒くさいから手に取らなかった。 眠い目をこすりながら、布団を出る。ああ、寒い。トイレに行って、小便。 その流れでバスルームを開けると、シンタロウが飯を寄こせと飛びついてきた。 朝からうっとうしいな。その前にやることがあるだろ。 排水溝に山盛りになったヤツの糞を、シャワーで洗い流す。汚いし、水が冷たいし、わずらわしい。 このくらい、自分でやれよな。ゴルフクラブを使えたり、消火器を投げることはできても、自分の糞を流せないなんておかしな話だよな。 そういえば、あれだけ器用なララも、自分では帯を結べない。ラバナスってのは、どこか抜けているのかね。 あらかた流し終えると、キッチンからドッグフードを取ってくる。ボウルに開けている最中なのに、もうむさぼり食ってやがる。何度見ても、気持ち悪い生き物だ。 オレも何か腹に入れようかと冷蔵庫を覗くと、昨日の残り物ブッシュ・ド・ノエルが我が物顔で鎮座していた。そっとドアを閉じて、見なかったことにする。 テレビをつけると、広島東洋カープの黒田投手が、二〇一六年も現役を続けるってニュースをやっていた。 メジャーを蹴ってまで古巣への恩返し、なんて美談だけれど、来年、広島が優勝するなんてありえないよ。
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