第34話 絶望

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「いや、もしかして、黒田が他の投手を食べて、能力を受け継ぐなんてことがあれば・・・」 馬鹿ばかしい妄想はやめて、アイフォンを手に取る。着信は、天パ野郎からだった。 『今日の大会、参加するんだろ? ウェイティング・フォー・ユー!』 ああ、そうか。今日は寒中水泳競技会、東北・甲信越予選の日か。すっかり忘れていた。というか、もともと出場する気なんてないし。 それにしても、こんな状況だってのに、運営は悠長に大会なんて開いてる場合かね。 オレは当然のごとく、西之沢に返信しない。ところが、しつこい天パ野郎は、次々に画像を送りつけてきやがった。どれも、可愛らしい女性とのツーショット。 どうやら、大会参加者の女性に声をかけまくって撮影しているらしい。 昨年に引き続き会場となる村上市市民プールには、こんなにも朝早くから大勢の物好きたちが集まっているわけだ。よくやるぜ。 葵さんとの写真もあった。会場の裏手で仕事をさぼってタバコを吸っているところをパシャリ。 迷惑そうに目を逸らす彼女に対して、天パ野郎は鼻の下が伸びきった笑顔。『運命の再会』とかって、タイトルが付けられている。どこが、運命なんだよ。
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