354人が本棚に入れています
本棚に追加
/540ページ
右へ左へと車線を変えながら、北上する。中条黒川バイパスに入り、タクシーは加速を続けた。目的地はもうすぐだ。
坂町を過ぎ、藤沢の信号で左折するかと思いきや、タクシーは交差点を通り過ぎた。
「ちょっと、その信号を曲がらないと!」
慌てるオレに、運転手は怪しく微笑む。
「目的地は、村上市市民プールでしょ。なら、こっちでいいんです」
バイパスから突然脇道へと逸れた。車一台がやっと通れるような、狭い道。もしかして、オレははめられたのか?
こいつ、シュルトの回し者だったのか!
思った矢先に、タクシーは止まった。
目の前には、コンクリートの建物。看板には、しっかりと『村上市市民プール』の文字が書かれている。
併設する総合体育館側からではなく、バイパスの側道からプールにたどり着く近道だったのだ。
運転手は、振り向いてにっこりと微笑んだ。
「私もブリーダーなんですよ。試合、頑張ってください」
なんだ、仲間だったのか。オレは車を降りながら、感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとう。この近道が、世界を救ったかも」
※ ※ ※ ※ ※
最初のコメントを投稿しよう!