第35話 最強

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右へ左へと車線を変えながら、北上する。中条黒川バイパスに入り、タクシーは加速を続けた。目的地はもうすぐだ。 坂町を過ぎ、藤沢の信号で左折するかと思いきや、タクシーは交差点を通り過ぎた。 「ちょっと、その信号を曲がらないと!」 慌てるオレに、運転手は怪しく微笑む。 「目的地は、村上市市民プールでしょ。なら、こっちでいいんです」 バイパスから突然脇道へと逸れた。車一台がやっと通れるような、狭い道。もしかして、オレははめられたのか?  こいつ、シュルトの回し者だったのか! 思った矢先に、タクシーは止まった。 目の前には、コンクリートの建物。看板には、しっかりと『村上市市民プール』の文字が書かれている。 併設する総合体育館側からではなく、バイパスの側道からプールにたどり着く近道だったのだ。 運転手は、振り向いてにっこりと微笑んだ。 「私もブリーダーなんですよ。試合、頑張ってください」 なんだ、仲間だったのか。オレは車を降りながら、感謝の気持ちを伝えた。 「ありがとう。この近道が、世界を救ったかも」    ※ ※ ※ ※ ※
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