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普段は女子更衣室として使われている部屋は、大会関係者の控室になっていた。
慌ただしく打ち合わせをする係員と警備員たちをすり抜けて、奥のシャワー室へ急いだ。
五つ並んだシャワーボックスの真ん中に、女はいた。左手が、手錠で頭上のシャワーヘッドにくくりつけられている。ノースリーブの赤いドレスから掲げられた白い腕が、やたらと艶めかしい。
タイル壁に寄りかかっていた女は、オレを見つけてサングラスを外した。
「グラッド・トゥ・シー・ユー・アゲイン」
オレはアイフォンの翻訳アプリを起動させる。
「こんな場所に、何にし来たんだ」
翻訳の音声を聞いて、ブロンド女優は薄ら笑いを浮かべる。女の吐く英語は、たちどころにアプリが翻訳してくれた。
「私ハ、アナタト快楽ノ時間ヲ過ゴスタメニ来マシタ」
「もう、冗談は通じないぞ。シュルトはどこだ?」
「私ハ、しゅるとノ考エヲ持ッテイマセン。トコロデ、私ト楽シミマセンカ、野外デ」
「ふざけるな。ガディンもいるんだろ。何を企んでいる?」
女はブロンドの髪をかき上げて、手招きした。ドレスのスリットから覗く白い太ももに、思わず生唾を飲みこむ。
「モット、ソバニ来テクダサイ。私ノ吐息ガ、アナタノ耳ニ吹キカカル距離マデ」
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