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「今年の東北・甲信越ブロックは、応募者が殺到して、参加枠を倍増したのよ。シードも含めて、七十二頭」
背後から葵さんが説明してくれた。七十二頭ってのは、運営側が過去の実績と経験と、草試合の結果や評判を聞いて選別した数だ。
ここに選ばれなかったラバナスたちは、何万といるだろう。あのタクシー運転手のラバナスも、その一頭か。
「それもこれも、昨年のチャンピオンが参加するって噂があったから。みんな、シンタロウくんと闘いたくて集まったのよ」
強い相手と闘うこと、それがブリーダーにとっての名誉なんだ。
根も葉もない噂は、ММОRPG『ドラゴン・ウインスペクター』で流されたに違いない。
残念だが、闘う相手は、あんたたちじゃない。人類滅亡を企む、少年ラバナスの方だ。
この大勢の観客の中に、シュルトがいるのか?
「警備員を始め関係者全員に、シュルトの手配書を渡してある。見つけたらすぐに連絡が来るようになっているわ」
葵さんは、インカムのイヤホンを指差した。会場には葵さんと同じ黒ジャケット姿の者たちが、人ごみをかき分けて巡回していた。だが、あの野郎はまだ見つかってない。
「ガディンなら、一目瞭然。あの体格を隠すのは、不可能よ」
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