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体長三メートル超、体重三トンオーバーの巨躯。
そんなものが隠れられるスペースはどこにも見当たらない。参加ラバナスのケージも、そこまで大きい物はない。どこにいる? 何を企んでいる?
「ほら、ちゃんと挨拶しなさいよ」
葵さんに肩を小突かれて、メインプールに目を向ける。
水の張られていないプールには、すでに二頭のラバナスが食い合いの真っ最中だった。
虹色に輝く毛並のヒョウが、六本脚のウシを追いかけていた。
プールの縁で、浦瀬牧場の原さんと杉山さんがこっちに手を振っている。あの虹色ヒョウが、彼らのラバナスか。
オレは、苦笑いで手を振り返す。二人は、「見ていて」というふに指を差し、虹色ヒョウに指笛で合図をした。
すると、ヒョウは身体を丸め、尻のあたりに折りたたんでいた羽を広げた。それは、まるでクジャクみたいに美しい飾り羽だった。
ラバナス・ビューティー部門があれば、間違いなく優勝だな。会場はその美しさに、ため息交じりの歓声を送った。
それにしても、ザック&バーチって会社は、なんて呑気なんだ。
いつヒト感染ウイルスが誕生するか分からない状況で、こんな大会を開催しているなんて。まったく、狂った会社だ。
「あれ? やっぱり来てるんじゃないか、ボウィ! ジュビリーニは連覇を狙いにきたのかい、ディフェンディング・チャンピオン」
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