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会場中がどよめいた。ケージの中から、男の子が現れたからだ。
中学一年生くらいの背丈、金髪のミディアムヘア、ニットジャケットを羽織った外国人少年。もちろん、オレたちはそれが誰だか知っていた。
シュルト。人類社会を崩壊へと導く、天才少年ラバナス。自称、新世界のゴット。縦長の瞳が、笑っていた。
葵さんはマイクで、全関係者に一斉連絡をする。
「シュルトが現れた。全員、最警戒態勢へ!」
あの野郎らしい、人を馬鹿にした登場だ。
「葵さん、狙撃班と焼却班の準備はできてるんだろうな?」
「まだ、こっちへ向かっている最中よ」
これだから運営の呑気さには呆れる。もともと地方大会なんて、改造スタンガンくらいしか用意されていないんだそうだ。オレが電話をかけてから、出動したって言うんだから、話にならない。
「あの自転車泥棒だけなら、オレでも捕まえられる。ガディンが現れる前に、一気に決めるぞ」
葵さんと西之沢の制止を振り切って、オレはプールへと駆け出した。
「どけ、どけ!」
ブリーダーの人混みで、思うように前へ進めない。垣間見えるプールでは、シュルトが西側のケージに近づいていた。
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