354人が本棚に入れています
本棚に追加
「そろそろ出て来てよ、ほら」
シュルトの声に反応して、一・五メートル四方のケージが揺れる。内側からの圧力で、ケージを巻いていた鉄の鎖が千切れた。
ケージの留め金がはじけ飛び、四方の鉄格子がパタパタと倒れる。
あらわになったのは、灰色の四角い物体。
何だ、ありゃ。
立方体ではあるが、所々に産毛のようなものが生え、深く刻まれたシワも見える。生き物のようだ。生き物が、無理やり正六面体に押し込められているのだ。
上の方から、ホースらしきものが現われた。ヘビのようにクネクネと曲がり、あたりを伺っている。
「あれは、鼻じゃないか? ゾウの鼻だ! ってことは、あれはガディンなのか!」
三メートルを超える巨躯は、自らの身体を折り曲げ、骨を砕いてまで、たった一・五メートル四方のケージの中に潜んでいたのだ。
でも、そんな身体じゃ、身動きひとつできないじゃないか。あんな肉の四角い塊が、何の役に立つって言うんだ?
いや、ある。あのボロボロの身体を、元に戻す方法が。
「ほら、行け、エルガー・ラッテ」
最初のコメントを投稿しよう!