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ネズミを握った手を頭上に掲げる。ガディン復活を、何とか阻止することができた!
勝ち誇るオレの横を、もう一匹の灰色の影がすり抜けた。
「えっ?」
真っ赤な目をしたネズミは、平然とオレの横を通って行く。灰色の立方体に開いた穴めがけてジャンプし、自ら吸い込まれていった。
「修治さん、エルガー・ラッテが一匹だなんて思わないでよ」
立方体の真ん中に開いた穴が上下に動き、ネズミの血しぶきがあがる。ペッと小さな頭が吐き出された。
ゴキゴキ、ボキボキと骨の軋む音をたて始める。
灰色の立方体だったそれは、見るみるその形を崩し、手が現れ、極太の足が伸び、大きな耳がひるがえった。
会場中が呆気にとられる中、瞬く間に身長三メートル超の巨躯が起き上がった。
オォォォォォン!
唸り声をあげ、目を真っ赤に染めたゾウの王様が完全復活を遂げる。
一地方都市の小さな市民プールに、キング・オブ・キングス、ガディンが降臨したのだ。しかも、怒髪天鼠を食べて、完全にイっちまった姿で。
会場の端々から、憧れのハリウッドスターに向けられるような黄色い歓声があがった。あのゾウがガディンだと気づいたのだ。
それもそのはず、ガディンは現役世界最強のラバナス。世界で最も有名な化け物。自慢の白い牙が、きらりと光った。
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