第9章   少しだけ近くに

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そして小さくかぶりを振ると、まだどこか寂しげなものを滲ませて 微笑んでくれた。 「夏海さん、もう一回、ギュッてしていい?」 「うん……」 頷いた私に、彼はそっと腕を回した。 ゆっくりと私を包む、彼の腕。 それに、静かに力が加わった。 「ナッちゃんって、呼んでもいい?」 「うん」 私の頭上から聞こえるくぐもった彼の声に、私は静かに頷いた。 すると、もう少しだけ彼の腕に力が加わる。 そして、私の頭のてっぺんに顔を埋めた彼が、 少し震える声で呟くように言った。 「ありがとう、ナッちゃん」
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