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そして小さくかぶりを振ると、まだどこか寂しげなものを滲ませて
微笑んでくれた。
「夏海さん、もう一回、ギュッてしていい?」
「うん……」
頷いた私に、彼はそっと腕を回した。
ゆっくりと私を包む、彼の腕。
それに、静かに力が加わった。
「ナッちゃんって、呼んでもいい?」
「うん」
私の頭上から聞こえるくぐもった彼の声に、私は静かに頷いた。
すると、もう少しだけ彼の腕に力が加わる。
そして、私の頭のてっぺんに顔を埋めた彼が、
少し震える声で呟くように言った。
「ありがとう、ナッちゃん」
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