44人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、鼻にティッシュを当てたまま、慌てて彼を見上げた私を
彼はクスッと笑う。
「大丈夫です」
「でも……」
「確かに高給取りじゃないですけど、スーツの替えくらいは持ってますから」
「あっ、じゃあ、せめてクリーニング代を」
そう言いつつ再びバッグに突っ込んだ私の手に、そっと彼の手が乗せられた。
「夏海さん。心の痛み、少しは治りました?」
えっ……?
目を上げると、微笑みの消えた彼の眼差しが心配そうに私を見つめ
聞いてくる。
それで、ちょっと声に詰まった私は、ゆっくりと気付いた。
最初のコメントを投稿しよう!