第10章   花火の夜

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しかも、それから車の後部座席で並んでいる間、 ずっと冠くんは視線を俯けたまま。 途中、ファミレスで食事をする間も、目的地に着くまでの道のりも、 会話は、ほとんど響くんが引っ張り、 冠くんは、振られた話に訥々(トツトツ)と答えるだけだった。 こうして着いた場所は、かつては別荘も多かったという葉山。 そして案内されたのは、ちょっと見、旅館のような場所。 「ここ、俺の伯父のやってる会社の保養所なんですよ」 へえ……。響くんって、もしかしてお坊ちゃん? チラッと、そんな事が頭を掠める。 しかも、従業員の人たちとも顔なじみらしく、 彼は気安く挨拶をすると、勝手知ったように屋上へと案内してくれた。
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