第9章   少しだけ近くに

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「ごめんね、心配させて。でも今日は、心が痛んだわけじゃないの」 そして、少し怪訝そうな面持ちになる彼に、私は微笑んだ。 「確かにね、全然、心が痛んでなかったわけじゃないかもしれない。 正直、まだ気持ちがグチャグチャで、よく自分でも分からないの。 でもあの時、冠くんの顔を見たらね。私、なんだかすごくホッとしちゃって」 友之への気持ちが、スッキリと晴れたわけではない。 もちろん彼との未来も、まったくの白紙だ。 そして何より、あの時感じた「嫌悪感」が、私の身も心も凍り付かせるように縛っていた。
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