第9章   少しだけ近くに

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そんな時に、思いがけず見つけた彼の姿。 いったいどれ位、あの場所で待っていたんだろう。 だが、そんな事など頭をよぎる隙もないほど、 一瞬で、涙が浮かんでいたと思う。 本当に彼の姿を目にしただけで、なぜか私を縛り付けていたものが フワッと解けた気がしていた。 だから、 「ごめんね、こんなにしてもらったのに、 私、今は、まだきちんと話ができそうになくて……。 でもあの時、駅で見付けてくれてから、ずっと……、 今も、冠くんが助けてくれたのは本当。 なんかスーパーヒーローみたいで、すごく嬉しかった」 ありがとう――。 素直な気持ちで、そう言ったつもりだった。
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