第9章   少しだけ近くに

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だが彼の顔は、まだ心配を浮かべたまま。 そして、 「夏海さん。このところ、ずっと夏海さんを苦しめてる辛くて悲しい事と、 お別れできたんですか?」 真っ直ぐに向けられる彼の眼差しに、私は小さく口篭った。 しかし、誤魔化しも、取り繕いも利かないとも思った。 「まだ、完全にお別れできてはいないの。 っていうか、お別れするのかも分からない」 「それは、夏海さんが望んで、お別れしないっていうこと?」 私は、少しだけ言葉を探した。 しかし、やはり答えは一つしかない。 「私の望む答えが、まだ見付からないの」
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