第9章   少しだけ近くに

7/20
前へ
/38ページ
次へ
今度は彼が、少し言葉を探すように小さく口を閉ざした。 そして、 「じゃあ、その答えが見付かるまで、 僕、夏海さんのミルクチョコでいてもいい?」 なんで、こんなに切なそうな顔をするのだろう。 彼は、まるで独りぼっちになった子犬のような目をして、私に言う。 しかし、やっぱり彼の気持ちを利用するような事はしたくない。 「ねぇ、冠くん」 私は、まだ私の手の上に乗ったままの彼の手に そっと、もう一つの手を重ねた。 「普通の友達じゃ、ダメ?」 少し視線を落とした彼が、小さく唇を噛んだように見えた。 そして、また、あの切なげな目を私に向ける。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加