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夏海さん……。
泣きそうだった彼の顔が、少しだけ綻んだ。
だから私も、微笑み返す。
「冠くんが笑ってくれるだけで、私の心には優しいミルクチョコレート。
でも、ごめんね。私が、気持ちの整理を上手くつけられなくて、
今はまだ、友達以外にはなれそうにないの」
ズルいな――。
彼の気持ちを知らないわけでもないのに、こんな事を言っている自分に
声なく呟く。
だがズルくても、彼と、このまま「サヨナラ」はしたくなかった。
複雑に絡み、口には出せない互いの気持ちが交錯し、
私たちの間を短い沈黙が埋める。
しかし、
ごめんね――。
再び言いかけた私の唇に、彼の指先がそっと触れた。
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