44人が本棚に入れています
本棚に追加
第9章 少しだけ近くに
どれくらい、泣いていたんだろう。
自分でも、呼吸をしてるのか、泣きじゃくっているのか分からなかった
ものが、すうっと楽になってきた。
それと同時に、私を抱きしめていた冠くんの腕も、ゆっくり緩んでいく。
「ごめんね……」
そして、やっと私の言葉も戻った。
「少しは、スッキリしました?」
そう言われて、思わず目の前の彼を見上げた。
するとそこには、あのワンコスマイルと差し出されたポケットティッシュ。
「ごめんなさい。僕、きれいなハンカチ持ってなくて……」
彼のスマイルに、ほんのわずかに照れが浮かぶ。
それで、にわかに私も我に返った。
最初のコメントを投稿しよう!