晴れ、時々涙。

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「好きです、付き合って下さい」 そして頭を大きく振り下げて、右手を差し伸べる。 「嫌です。付き合えません」 9回目の告白だ。 そして、9回目のノーだ。 「覚えておけよっ。絶対お前は私を好きになる。 てっへーんだ!」 といつもの決め台詞をはいて、高校三年生の城川香織は教室へと戻っていった。 「また、加納くんにコクってきたの?」 呆れた顔様子で、同じクラスの山本紀子は香織の顔を見ていた。 「うん、そしてまた振られてきた」 てへっと舌を出し、右手を頭の後ろに回す。 このやり取りも9回目になる。 「同じ人に振られ続けて『疲れた...もうイヤだ...』とか思わないの?いい加減諦めたら?加納くんは香織を好きにならないんじゃない?女子苦手そうだし、もしかしたらあっち系かもよ」 ガラガラと教室のドアを開け、ちょうど席につこうとしている加納直樹を紀子は見た。 「それはない!女の子が好きなはず!でも...そろそろ疲れたけどね」 はぁーっと、大きくため息をついて、窓から見える空を見ていた。 香織が加納を好きになったのは高校1年の5月だった。 クラスコンパで行った先は香織がこの世で最も苦手とするカラオケだった。 歌わない、なんて選択肢はクラスの空気を壊すだけだと確信し、ウケ狙いの唄をダダすべり覚悟で思いっきり歌ったら、誰よりも笑ってくれたが加納だった。その笑顔に一目惚れした。 香織は小学生のころから人を笑わせることが大好きだった。恵まれない容姿を受け入れ、「自分は女の子らしくは無理だから、面白く明るく生きよう」と決めていた、というか母親に教え込まれていた。そういう自分を好きになってくれる人がいつか現れるはずだと信じていた。そしてそれが加納だと信じていたのだ。 悲しいことも辛いことも「自虐ネタ」として笑い飛ばせば結果オーライ。自分は女の子らしくなんて無理なのだとはなから諦めていた。 加納はクラスではまったくモテなかった、というより存在が薄かった。一人でいることが多く、目まで伸びた前髪と分厚い黒縁のメガネのせいで表情がよく読み取れなかったせいか、「加納くんってどんな顔だっけ」と言われることがよくあった。 だから安心して加納を好きになれた。誰のものにもならないから、何度も告白してればそのうち受け入れてくれるだろう。非モテ女子の私とお似合いなのは加納だけなのだ、と香織は自負していた。
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