第13章  雨の夜に

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彼の手を引くようにして、自分の部屋の玄関前までやって来た。 そして玄関に入っても尚、迷うように躊躇って 三和土(タタキ)に立ったままの彼に声を掛ける。 「今、タオル持ってくるから、上がって?」 何度目かに彼を促し、バスルームでタオルを取って戻ると、 ようやくリビング・ダイニングとしている部屋に彼の後ろ姿があった。 「はい、タオル」 彼の前にタオルを差し出し、 「今、お風呂入れるね」 そう言って、再び彼の前を離れようとした。しかし、 「ナッちゃん……」 私は、手にしたタオルごと彼の腕に抱きすくめられた。
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