第13章  雨の夜に

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そして、スッと彼の腕の力が緩められ、 熱い瞳に見詰められた次の瞬間、彼の唇がフワッと私の唇を塞いだ。 柔らかく唇を吸われ、何度となく小さく啄みだす。 そしてそっと唇を離し、私を見詰める彼の目には、熱っぽい色が宿っていた。 だが、躊躇う間も、言葉も挟む間も、ひとつ息をつく間さえもなかった。 彼は、熱を帯びた眼差しのまま再び私の唇を塞ぎ、 ゆっくりと重ねた唇で愛撫を始める。 柔らかく吸いつき、そっと私の唇を舌先で舐めて、 それを小さく唇で甘噛みしてくる。 なんだか、さっきまでの彼とは別の人のよう。 しかし、雄の匂いを漂わせ、唇への愛撫を繰り返されるうちに 私の頭の中もジンと緩く痺れはじめる。
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