そこに眼鏡があったから。

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 ようするに犯人は、最初の取っ掛かりこそ自らの手で仕掛けたものの、その後のことは、周りの「良心」に委ねたのだ。  最初の一人目は明らかに彼の手による被害者である。  だが、その後で何人、何十人もの人が悪戯に引っ掛かっているという悪戯の連鎖は、周囲の「気持ち」一つでどうにでもなった筈であり、彼の手による被害者とは言えないのではなかろうか?  そう。  もう、この悪戯は犯人の手を離れているのだ。  きっと、この現状をどこかでこっそり覗き見しているであろう犯人は、自分が思い描いた通りに事が運んでいるのを見て、ほくそ笑んでいるに違いない。  知能犯である仕掛け人に対し、俺は、ある種の尊敬の念が生まれ、被害にあったにも関わらず自然と笑みが漏れた。  後日。  駅の防犯カメラが一部始終を捉えていて、YouTu〇eやTVを賑わせ、「俺の尊敬を返せ!」と叫んだことはここだけの話だがな。
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