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リビングのソファに座った広瀬さんが部屋をきょろきょろ見渡した。
「へえ、うちも同じ1LDKだけど、こっちはそっくりそのまま反転させた間取りになるんだ」
直哉が慣れない手つきでコーヒーカップをカタカタといわせて運んできた。ローテーブルにそっと置く。
「不動産屋さんが、四階の部屋は全て新婚さん向けの1LDKといっていました。コーヒーどうぞ」
「ありがとう。そういえば営業の人が、そんなこといってたかなあ」
広瀬さんが不思議そうに直哉と俺の顔を見る。俺は広瀬さんの思ったことをすぐに察した。
「ぼくは衣川くんと同じ大学の友達で、南澤(みなみさわ)といいます。ぼくのアパートはコンビニの向こう側にあって、今夜は彼の部屋に遊びに来てるだけなんですよ。彼はイイトコの子なんで、一人でこんなところに住んでるんです」
広瀬さんは納得の顔をした。
「あ、そうなんだ。じゃあ彼女いない者同士、イブの夜を一緒に過ごそうってわけだね」
「あはは、そんなところですね」
直哉が不服そうな顔で俺を見たが、仕方がないだろうといった感じで目を細めて返した。
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