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「うん。めっちゃ好き。でも今すぐは必要ないかな」
タケルもユウカも自宅通いだ。免許を取ったらすぐに乗れる車もある。ちょっと羨ましいとも思うけど、直哉とたくさんの時間を一緒に過ごせる今の生活は、車に乗ることよりもずっと刺激的である。だから実家を離れて直哉と同じ大学に進学したことを俺は一度も後悔したことはない。
隣を見ると、グラス半分のシャンパンで頬を赤くしてしまった直哉が見つめ返してきた。彼はみんなを見渡していった。
「ぼくは、これから料理の勉強をしようと思う」
直哉は席を立ち、キッチンへ行くと一冊の本を手にして帰ってくる。『簡単!100円おかず』というタイトルの料理本。みんなに本の表紙を見せる。
「外食とかコンビニ弁当を減らして、少し節約しようと思ってるんだ」
マコトが眉をあげた。
「なんだよ、直哉んちは金持ちなんだから、別におまえが節約する意味ないだろ」
「うん、だけどちょっと貯金したくて……」
直哉が俺の顔を見る。俺はテーブルの下でそっと直哉の手を握っていった。
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