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三人を見送ったあと、エントランスのオートロックキーを解除した直哉がいった。
「今日は楽しかったね。みんなぼくたちのことを理解してくれていて、すごく感謝してる。むちゃくちゃなことをいうけど、ぼく、本当に嬉しいんだ」
直哉は少し目を潤ませていた。直哉が嬉しいなら、俺はなんと思われてもかまわない。直哉の髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜてやった。
エレベーターに乗って、四階のボタンを押した。直哉が俺の手に指をからめてくる。頬はまだシャンパンのせいで赤いままだ。
「ねえ、健人?」
「ん?どうしたの」
「あのさ、今日一緒にお風呂はいらない」
直哉の顔を見たまま息をするのを忘れてしまう。こういうとき、なにもリアクションできない俺は、ユウカのいうとおり確かにつまらない男だと思う。直哉が首をかしげた。
「嫌なの?」
「いえ、嫌じゃありません」
ジーンズの中では、もちろん良いリアクションをしている。直哉の指をぎゅっと握り返した。
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