☆クリスマスには天使にキスを☆

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 キッチンの片付けを終わらせて、直哉と二人でリビングのセンターラグに腰を下ろした。床暖房がきいて暖かだ。スマホを見ていた広瀬さんが顔を上げた。 「きみたちが洗い物をしている姿を見て、嫁と結婚する前のこと思い出したよ。付き合ってた頃、家事はなんでも分担してやってたなって。今思えば、ままごと気分だったのかもしれない」  なんと答えればいいのかわからなかった。黙っていると、広瀬さんが慌てたように手をふる。 「あ、ごめん。きみたちがままごとしてるという意味じゃないよ。ぼく自身の話ね」  広瀬さんの話に悪意があるとは思っていなかった。 「あ、はい。だいじょうぶです」  広瀬さんはスマホをローテーブルに置くと、意識をこちらに向けた。 「きみたちは、今年大学生になったんだよね。随分しっかりしてるねえ」  俺は激しく首を横にふった。 「ぜんぜんしっかりなんかしてません。こいつはまあまあしっかりしてますけど」  直哉を親指で指した。直哉は眉毛をはの字にして首を横にふる。 「ぼくもぜんぜんです」  広瀬さんは情けなく笑った。 「だけど少なくとも、今のぼくよりはしっかりしてる。嫁と喧嘩してこんな夜遅くに家を飛び出して、隣の人にお世話になるなんて子どもの家出みたいだろう」  俺は真面目な顔で、また首を横にふった。直哉が取りなすようにいった。 「でも、ぼくらもくだらないことで喧嘩することありますし」 "ぼくらも"じゃない。俺たちの関係を新婚さんと同じようにいってしまった直哉に慌てて目配せした。直哉がしまったという顔で口に手を当てる。
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