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イルミネーションでクリスマスツリーみたいになったヒマラヤ杉を見上げて俺はいった。
「ねえ知ってる?このイルミネーション、みんなに光る学費って呼ばれてるの」
直哉は吹き出し笑いをした。
「そうなの?あ、そうか。この電気代は学費でまかなわれているってことか。上手いこというなあ」
「うん。ここの大学って別にキリスト教じゃなかったよな?なんでこんな盛大にクリスマスの飾り付けなんてするんだろ」
直哉が首をかしげた。
「わかんない。他の大学もみんなやってるからじゃない?」
「はは、そっか。まあなんでもいいや。キレイだから」
「うん。クリスマスなんだから、みんなでお祝いすればいいと思うよ」
そういって、直哉は祈るように胸の前で両手を組んだ。それを見て俺は思い出した。
「そういえばおまえ、カトリック系の幼稚園に行ってたっていってたけど、直哉ってクリスチャンなの?」
直哉は目を閉じて首を横にふる。
「違うよ。ただ幼稚園がカトリック系だったってだけ。多分ほとんどの子がクリスチャンでもなんでもなかったと思う」
「へー、そういうものなんだ」
「うん、そういうもの。そのクリスチャンでもなんでもない子ばかりが集まって、クリスマスお祝い会で聖劇とかやるの。ぼくは年長さんのときに天使の役をやったんだ。背中に羽を付けて、こうやって両手を前で合わせて……」
直哉は胸から右手だけ斜め上にあげて口を開けた。
「えっと、セリフなんていったっけな。忘れちゃったや」
俺はまた直哉の仕草にたまらなくなった。
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