☆クリスマスには天使にキスを☆

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 玄関扉が閉まったとたん、直哉が俺の首に腕をまわしてくる。 「健人、やっと二人きりだよ」  直哉の腰と背中に腕をまわして抱き締めた。彼が唇を薄く開いて顔をよせてくる。 「直哉はキスが好きだなあ」 「そのいいかたヤダ。ぼくは健人とキスするのが好きなの」 「わかってるよ」  直哉のやわらかな唇を割って、舌を入れてやった。  リビングに戻り、自分のスマホを手に取る。アルミの削り出しフレームと、背面のSOMYのロゴが見えるところが俺のこだわりだった。  液晶画面に暗証番号を入れてロックを解除させる。別に用はないけどもスマホを無意識にチェックしてしまうのは、たくさんある現代病のうちのひとつかもしれない。  あるアプリ開発会社のデータによると、人は1日平均100回以上スマートフォンをチェックするという。さすがにそこまでは見ていないと思うけど、スマートフォンは一度使い始めると、なければ困る存在になってしまうのは確かなのだ。  横から直哉が俺のスマホの画面をチラリと覗いた。俺は直哉にスマホを差し出した。 「俺のスマホは何も怪しいことなんかないよ。まあちょっと変わってるところといえば、お前の写真がいっぱい入ってるところだけど」  直哉が俺のスマホを手に取った。 「暗証番号は1203。勝手に見てもぜんぜんいいから」  直哉がそっと1203をタップした。 「じゃあ、1203で解除できなくなったら怪しいと思ったらいいんだね」 「そんなこと絶対しない」  直哉の頭を両手で挟んで、おでこにキスしてやった。
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