141人が本棚に入れています
本棚に追加
玄関扉が閉まったとたん、直哉が俺の首に腕をまわしてくる。
「健人、やっと二人きりだよ」
直哉の腰と背中に腕をまわして抱き締めた。彼が唇を薄く開いて顔をよせてくる。
「直哉はキスが好きだなあ」
「そのいいかたヤダ。ぼくは健人とキスするのが好きなの」
「わかってるよ」
直哉のやわらかな唇を割って、舌を入れてやった。
リビングに戻り、自分のスマホを手に取る。アルミの削り出しフレームと、背面のSOMYのロゴが見えるところが俺のこだわりだった。
液晶画面に暗証番号を入れてロックを解除させる。別に用はないけどもスマホを無意識にチェックしてしまうのは、たくさんある現代病のうちのひとつかもしれない。
あるアプリ開発会社のデータによると、人は1日平均100回以上スマートフォンをチェックするという。さすがにそこまでは見ていないと思うけど、スマートフォンは一度使い始めると、なければ困る存在になってしまうのは確かなのだ。
横から直哉が俺のスマホの画面をチラリと覗いた。俺は直哉にスマホを差し出した。
「俺のスマホは何も怪しいことなんかないよ。まあちょっと変わってるところといえば、お前の写真がいっぱい入ってるところだけど」
直哉が俺のスマホを手に取った。
「暗証番号は1203。勝手に見てもぜんぜんいいから」
直哉がそっと1203をタップした。
「じゃあ、1203で解除できなくなったら怪しいと思ったらいいんだね」
「そんなこと絶対しない」
直哉の頭を両手で挟んで、おでこにキスしてやった。
最初のコメントを投稿しよう!