☆クリスマスには天使にキスを☆

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 直哉にいわれた通り、先にベッドに潜り込んだ。直哉のベッドはセミダブルだが、男二人だとやはり狭い。だけど俺たちはそんなこと気にしてなかった。  直哉がリンゴを俺に渡してくる前、何かを消したのは明らかだった。それを怪しまれないようにするため、あえて風呂に入る前に俺に預けたのだろうが、それが逆にわざとらしくて変な胸騒ぎがする。  何を消したのか気にならないといえば嘘になる。直哉のリンゴを隅々まで調べたら、どの部分を消したかくらいはわかるかもしれない。  ラインのメッセージだろうか。何かのアプリだろうか。もしかすると内緒のメールアカウントかもしれない。  だけど今までの直哉の態度、行動を思い出しても、俺に内緒で他に恋人がいるとも考えにくい。やはり俺の考えすぎだろうか。  いっそ思い切って訊けばいいのだろうが、あまり彼を束縛しすぎても、器の小さな男だと思われてしまう。俺の最も嫌いなタイプの人間である。  ここはやはり、大きく構えて気にしてない素振りを貫くべきじゃないだろうか。  きっと大丈夫。直哉は俺を裏切ったりなんかはしない。彼は今まで数えきれないくらい俺に大好きといって、キスしてきたのだ。彼を問い詰める前に、まずは自分が大人にならなければならない。
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