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誰かが俺の後ろから、どっかり体重をかけて抱きついてきた。変な裏声を出す。
「うん、ずっとだよ」
びっくりして振り返ると、タケルだった。
「なんだよ、おまえひっつくなよ!」
頭をはたいてやった。タケルはズレたメガネの位置をなおした。
「健人、冷たいなあ。もうあの夜のことは忘れちゃったの?」
「忘れてないよ!酔っ払ったおまえのゲロの始末をしたはことなっ!」
後ろから抱きついてきたのは、吉村武流(よしむらたける)だった。彼も同じく高校時代の同級生である。俺と同じ特進コースで三年間同じクラスで過ごした後、同じ大学、同じ文学部に進んだのは偶然のことだった。変に気が合う腐れ縁である。
今度は直哉の後ろから声がふってきた。
「そうかあ、俺の可愛い直哉は健人のもんになっちゃったんだよなー」
プラチナアッシュカラーの髪を撫で上げそういったのは、吉永誠(よしながまこと)だった。
マコトも同じ高校の同級生である。直哉と同じ国際コースを卒業して、俺たちと同じ大学の総合政策学部に進学した。直哉が呆れた顔をする。
「ぼくは一度もマコトのモノになんかなったことないよ。ていうか、きみたちいつのまに入ってきたのさ」
マコトが親指で玄関の方を指していった。
「だって鍵開いてたし」
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