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夜中にふと目が覚めて、携帯のボタンを押す。
「・・・3時48分」
またか。この時間に目が覚めるのはもう習慣なんだろう。
2年前の ーあの日ー の3時48分
けたたましく鳴った電話の着信音を忘れない。
暗い記憶を呼び起こさないように、深呼吸をして心を落ち着ける。
水でも飲もうと廊下に出たら、リビングの電気がついていた。
「キョウちゃん?」
呼びかけながら入っても、返事どころか人影すらない。水を飲んで電気を消したら、ベランダに続くレースのカーテンの向こうに、彼らしき人影をみた。
声をかけようと近づいても、気づくそぶりがない。
カーテンを開けたら、グラスに入ったお酒を煽りながら眉間に皺を寄せて、辛そうに煙草を吸う彼。
見たことのないその姿に、窓にかけた手を思わず引っ込めてしまう。
「あ、ひなちゃん」
気配に気づいたのか、驚いた顔でこっちを向いたキョウちゃん。外側から窓を開けて、心配そうな顔でわたしを見る。
「眠れないの?」
「目が覚めちゃった。キョウちゃんは?」
「アタシはちょっと、考えごと」
無理に笑っているのがわかって。どことなくその笑顔が寂しそうで、気づいたら私はベランダに座るキョウちゃんの頭を抱きしめていた。
「ちょっ・・ひなちゃん?」
「私じゃ、頼りないだろうけど、話したいことがあったらいつでも聞くから」
彼を守りたい。私は心からそう思った。
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