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いや待て。誰だこの男。癖のある金髪にペリドットの瞳。着ている服は見るからに仕立ての良いスーツ。あれ、でもなんかさっき、女言葉が聞こえたような。気の所為?気の所為だよね!だって目の前にいるのは紛れもなくーー
「王子様だー」
呑みすぎたのかもしれない。信じられないことがあったから、きっと頭が混乱してるんだ。ああ体が重い。このまま、ソファと一体化してしまいたい。そう思いながら、私は意識を手放したーー
「訳無いよね!ひとり暮らし女として、警戒心なさすぎでしょ!そんな少女マンガみたいな展開危険すぎるわ!!さあ!あなた誰!なんでうちに入ってきてるわけ?!」
一息で言い切って、ビシィっっと指を突きつけてやった。ちょっと息が上がってるのは、歳ではない、酒の所為だと思いたい。断じて、歳ではない。
「まあ元気な歓迎ねえ。インターフォン押しても気づかないみたいだったから上がらせてもらったわ。開けてくれないなんて酷ーいひなちゃん」
「……ひな、ちゃん?」
「え!ちょっとやだそこから?!楓さんから聞いてないの?響哉よー!有沢響哉!」
「アリサワ、キョウヤ」
「そ!今日からよろしくね?お、ね、え、ちゃ、ん?」
綺麗な面立ちと、母との電話で出てきたニューヨークに住んでいる義弟のアリサワキョウヤという名前、この口調、色々な情報が一気に繋がって、頭がショートしそうだ。つまりこれが私の、おとうとさん、というやつですか。
お母さん。聞いてないよ。義弟が超美形の、オネエだなんて!!!心の中で異国の地にいる母へ怨念を送っていると、頬にふにっとした感触。え?ふにっと?今、この人、なにしたの私に。
「ふふっぼーっとしてるから、ご挨拶♪」
「こっここここ!ここは日本デスーーーーー!!!!」
私のおとうとは、金髪に緑の目のアメリカンな超イケメンオネエでした。
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