君の心の熱に触れる

4/8
前へ
/37ページ
次へ
 何の説明もされずに『ん、やる』と差し出された箱の中に入っていた、新品のマグカップ。  シンプルで私好みのデザインと、私の手でも収まる小ささ。  断熱性が高いみたいで、洗うためにお湯を入れてみても全然熱くなかった。  多分、彼がわざわざ選んで買ってきてくれたんだろうなってことは分かったけれど、その意図する所が分からなかった私は、素直にそれを使うことができずにいた。 「使え」  唐突に押しつけられる、強い言葉。  マグカップで隠して入るけれど、眼鏡の奥にある彼の瞳は酷く不機嫌だ。  内心で戸惑うけれど、理由の分からない怒りに無条件で従ういわれもないと、持ち前のきかん気がムクムクと頭をもたげてくる。 「何でよ!  もらったから使わなくちゃいけないなんて、押しつけも甚だしい……」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加