生活力が貧困な私が自力で夕飯にありつけるただ1つの方法

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 私は、困っていた。  どれくらい困っているかというと、連載中の原稿のストックが4つともゼロで、締切が迫ったイベントの原稿は白紙、だというのに偏頭痛が発動していて、それでも気力を振り絞って原稿の編集をしていたら誤作動で1000文字ギリギリまで入力していたデータが吹っ飛んで心が折れたくらいに困っていた。  ……そういえば、今晩分の更新をしていない。  カッチコッチと時計が秒針を鳴らす居間で腕を組んで仁王立ちになりながらそんなことを思う。  だが今のこの状況では、そんな考えまでもが些事だ。  現在時刻はそろそろ20時。  仕事帰りの私が家に着くと家は真っ暗で、常駐しているはずである母上と妹君の姿はどこにもなかった。  ちなみに父上は夜勤族なので、姿が見えないのが通常運転である。  居間の机の上には、ペロリと残された1枚のメモ。 『出かけてきます。遅くなるかも。  夜は適当に作って食べておいて』  ……いや、遅くなるって、程があるでしょうがっ!!  内心でそう叫んでも、お出かけ中の二人には届かない。  私の胃腸は空腹という名のクライシス。  これは文句を言うよりも先に何か作らなくては倒れてしまうパターンだ。
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