生活力が貧困な私が自力で夕飯にありつけるただ1つの方法

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 私は仕方なく冷蔵庫を開く。  だがあまりにも寂しい冷蔵庫の中には、豆腐と生姜、使い切れなかった椎茸、干からびかけた葱しかない。 「……」  それでもめげずに冷凍庫まで漁ると、特売日に買い溜めしたらしいひき肉を発見することができた。  だがしかし、しかし、である。 「……私が家事は苦手であるということを、よもや忘れた訳ではあるまいな、母上」  小説の中の世界ならばここから信じられないような激うまメニューが作りだされる所なのだろうが、おっとどっこい、私は残念なくらいに家事というものは苦手なのである。  包丁なんて危なっかしくて持たせてもらえない。  そんなレベルなのである。 「うー、うー、うー!」  しかしここで指をくわえて母上の御帰還を待っていたら、飢え死にする未来はほぼ確定だ。  それくらい私の胃腸は今、空腹を訴えている。  たかが一食と侮ることなかれ。  空腹が極限に達すると手がつけられないほどに暴れ出す野獣とは私のことである。
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