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母上に見られたら卒倒されそうな適当さで豆腐を投入し終えた私は、豆腐のカップに片栗粉と水を入れて水溶き片栗粉を作る。
地獄の釜のように沸騰したフライパンの中に水溶き片栗粉を投入し、木ベラで丁寧に混ぜ合わせれば包丁を使わない1品料理の完成である。
「我が家特性、和風麻婆豆腐であります」
深めのお皿に盛りつけて、そのお皿に直接白米を突っ込めば、お手軽麻婆飯の出来上がりだ。
キュウキュウと空腹を訴える胃袋に負けた私は、台所に立ったまま不格好な麻婆飯を口の中にかき込んだ。
火傷しそうなほどに熱い豆腐にはしっかり味噌ベースの味がしみ込んでいて、これが涙が出るほどに美味しい。
空腹が最大の調味料だと言った先人はとても正しいと思う。
小説の中のような激うまメニューは生み出せないけれど、私が作り出したにしてはとても美味しい、不格好なお夕飯。
やればできるじゃないか、という自画自賛とともに、私は満足がいくまで麻婆飯を口に掻き入れた。
……適当すぎる調理、台所での立ち食い、そして何よりあと二人分のお夕飯が必要なことを忘れて白米をすべて麻婆飯にして掻き込んでしまった私に特大の雷が落とされるのは、これより数十分後のお話。
《 END 》
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