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同じ国の組織同士で、潰しあう。
全く持って無意味にしか思えないけれど、"高度な政治的判断"では、それもやむ無しらしい。
偽の情報で、深夜の港にやった来た彼も、護身用に拳銃は持っているだろうけど、ライフルとは射程が違う。
射程ギリギリの位置に私はいるし、しかも、暗視スコープ越しにしか見えないこの視界では、彼は私を認識すらしていないだろう。
『君が彼と付き合っているのは知っている。
だから、他のスナイパーに任せてもいいが、どうする?』
ボスにそう言われたとき、私は迷わず首を横に振った。
『彼だからこそ、私がやります。
信用出来ないのならば、サブをつけてもらってもかまいません』
啖呵を切った手前、今さら止めには出来ないし、そうするつもりもない。
一スナイパーに過ぎない私には、秘密裏に彼を逃がすような事は出来ないし、出来たとしても、彼が一生追われる事になる。
ならば、私が終わらせる。
他の、無慈悲なスナイパーになんかやらせない。
指定ポイントに彼が入ったのを確認して、私はライフルを構え直す。
「……ゴメンね」
そう呟くと同時に、ライフルの引き金を引いた。
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