私は彼のハートを撃ち抜きたかった

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「ははは、それくらいにしてやれよ。 ほら、ミニハムエッグをサービスしてやるから」 マスターが銀色トレイに、小さなハムエッグを載せてやって来た。 ふむ、まあ仕方ない。今朝はこれくらいにしてやるか。 自分でも少し恥ずかしくなってきたポーズを止めて、目の前に並べられたミニハムエッグを大人しく食べる。 サイズ意外は全く同じのこのメニューは、常連の女性客からの要望(主に私)で出来たメニュー。 おかげで、食の細い女性(主に私)にも大好評。 ミニサイズながら、ボリューム満点(というか、これでようやく世間一般の通常サイズ)のハムエッグに私も幸せを噛み締めていると、マスターが彼に新聞を渡す。 新聞好きな彼に対して、私はあまり新聞を読まない。 それに、新聞を読んでいる間、彼は無口になるから、どちらかというと嫌いかもしれない。 でも、それも含めて、この朝の僅かな一時は、お互いに忙しい毎日を過ごす私達の至福の時間だ。 「お、見ろよ! 日本で話題のアニメ映画がアメリカでも上映するってよ」 一面の隅っこを指差しながら、彼が私に新聞の記事を見せてきた。 眼鏡を外して記事を読むと、そこには、『日本の有名アニメ監督の最後の作品、全米公開へ』と書かれた小さな記事。
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