臭い

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臭い

 いとこの中にとても気難しい女の子がいる。  とりたてて人見知りという訳ではないのに、自分基準で『この人には近づかない』と決めた相手には決して近づかない。しかもその感覚が気まぐれで、以前あった時はニコニコ対応していた筈の相手に、今回はそっぽを向く、ということもざらだ。  親である叔父さん夫婦はかなり困っているようだが、まだ幼稚園児だということもあって、周りはそれを許していた。  俺も許す側なのだが、それでも気になり、何か理由があるのかを聞いたことがある。  そうしたらいとこは、嫌う相手のことを『とても嫌な臭いがするから近づけない』と言った。  人間、少なからず体臭はあるものだが、よほどでない限り、そんなにこの人からは悪臭が漂ってくると思ったことはない。  いとこはそうまで臭いに敏感なのだろうか。でも、暑い日に親戚で暑った時などに、それで辟易している様子はなかったし、そもそも、前は平気だったのに、いきなり嫌うよになった相手などはどうなのだろう。少しの間にそうまで体臭が様変わりをしたというのだろうか。  それを少し突っ込んで聞くと、俺の質問にいとこは小さく頷いた。俺には判らないが、いとこが言うには、前は平気だったのにいきなり体臭が変わってしまった人が何人もいたというのだ。  人の体臭がそんなにいきなり変わるなんて、普通ならありえない。もしや何かの病気にでも罹っているのではあるまいか。  そちらが心配になり、親戚の中で、これまでに体臭の変わった人は誰なのかを尋ねると、とんでもない答えが返ってきた。  いとこが口にした相手は、全員、もう亡くなっている人達だったのだ。  しかもその上。 「やぁ、二人共久しぶり」
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