臭い

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 親戚の伯父さんが俺達を見かけて声をかけてくる。それと同時にいとこは顔を引きつらせ、走ってその場から逃げて行った。  本人も含め、見ていた周りは、また気まぐれが出たと苦笑いをしていたが、俺だけは複雑な気持だった。  いとこが気づいた体臭の変化。もう亡くなった人達だけが、ある日を境に嫌な臭いになったという。だとしたら、伯父さんは…。  この時ぼんやりと頭に浮かんだ、俺の嫌な推測は正しかった。  この集まりから二ヶ月ばかり経ったある日、伯父さんはふいの交通事故で亡くなったのだ。  じきに亡くなる人間の体臭。いとこはそれを嗅ぎ分け、本能で避けようとする。つまり、あの子に避けられた人間は近く命を終えるということだ。  みんなにこのことを話すべきだろうか。いや、まだこれは俺の推測に過ぎない。この考えが事実だと証明するためには、もう少しいとこから色々聞いて、証拠のようなものを集めるべきだろう。  伯父さんの葬儀の席で、ずっと俺はそんなことを考えていた。そして、火葬場への移動のタイミングでいとこに声をかけた。  その瞬間。  以前、伯父さんが声をかけた時とまったく同じ表情を見せて、いとこは俺と真逆の方向に逃げ去ったのだ。  その姿を目で追っていたら、随分と離れた位置で立ち止ったいとこが、窺うように俺を見た。鼻を押さえながら。  あの反応。つまり、俺は…。  目の前がすぅっと暗くなる。全身から血の気が引く。  あの集まりからずっと考えてきたことだけれど、それは的外れすぎる考察だったと思いたい。  何もかも、向こうで用心深くこちらを見ているいとこの、ただの気まぐれ対応なのだと、そう思いたい。 臭い…完
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